はじめに
何気ない場所で、突然においが辛いと感じる…
気にならない人が多いはずのそのにおいに、不快感を覚えたり、吐き気がしたり、頭痛がしたり、思わずその場から離れたくなる…
そうした方はいませんか?
においに過敏な体質は、本人にとっては常に“見えない敵”と向き合うような毎日です。
この記事では、においへの敏感さがある私自身の体験を交えながら、具体的な対処法や受診の目安まで、実用的にまとめます。
すぐに使える対策も紹介するので、同じように悩む方の助けになれば嬉しいです。

私自身が自分で一番びっくりするにおいへの敏感さは、自分の口臭で夜中に目覚めてしまうこと!「くさっ!」と目が覚めてしまうんです…
1. 私の体験
私が、自分のにおいへの敏感さに気付いたのは20歳頃。子どものころは、トイレとか排水溝とか、通常不快に思われる匂いに吐き気を覚える、くらいでした。多分。
20歳頃から、「あれ?このにおい苦手だな…」と思うことが増えて。さらに、人のにおいを判別できるようになってきました。
人の残り香、みたいのがほぼほぼミスなく分かるようになったのです。
そして、特に不衛生にしているわけではないのに、においが苦手な「人」が多いことに気付いたのです。
あとは、特定の飲食店のにおいも苦手で、食べものが美味しいのは分かるんだけど店内のいろいろな混ざったにおいが辛い…というのもあります。
2. におい過敏ってどんな状態?
「においに敏感すぎる」状態は、感覚過敏のひとつで嗅覚過敏と呼ばれ、においを一般の人より強く感知してしまう状態を指します。
自分では気にしないようにしても嗅ぎ取ってしまうために、吐き気、頭痛、めまい、動悸、不安感など身体的・精神的な症状を伴うことがあります。
こちらの記事も参考にしてみてください→子どもの感覚過敏に親はどう対応する?相談歴20年の心理師がみてきた感覚過敏の具体例
3. なぜ起きるのか
においへの過敏さの原因はひとつではないようです。代表的なものを挙げると:
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ホルモン変動(妊娠初期に嗅覚が鋭敏になる人は多い)。

これももちろんありました!妊娠期はコンビニのにおいがダメ過ぎて全く入れなくなりました…
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神経系の変化や疾患(てんかん、片頭痛、脳や神経系の障害)。
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感染後の嗅覚変化(ウイルス感染後に嗅覚が変わることがあり、コロナで話題になった嗅覚障害も関連)。
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慢性的な心理的ストレスや不安(心理的な負荷が嗅覚の過敏化と関連する研究がある)。
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感覚処理の違い(自閉スペクトラム症や感覚過敏を伴う人で匂いに過敏になることがある)。
つまり、身体的な原因(鼻や脳の問題)と精神的・発達的な背景の双方が関係することがあります。
原因によっては治療で改善する場合もあれば、長期的な対処が必要な場合もあるのです。
4. 今すぐ使えるセルフケアと現場での対処法
私が実際に試して効果があったもの、推奨されている実用的な対処法をまとめます。
短期的にその場をしのぐテクニック
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深呼吸よりも口で浅く呼吸:鼻ににおいが入るのを減らします。
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ミントやガムを噛む:口中の強い香味で嗅覚の注意を分散させられることがあります。
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マスクを着用する:においを物理的にブロックできます。
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においの強い場所から一旦離れる:無理せず距離を取るのが第一。周囲の人に事情を簡単に伝えられるとよいかもしれません。

職場は専門家集団ゆえに理解もあり、場を離れるような配慮をしてもらえることがありました!
生活習慣でできること
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低香料化:私はこれらは大丈夫でしたが、柔軟剤・香水・芳香剤の使用を控えた方がよい方も多いです。公共の場で“香料が苦手”とカードやバッジで示す人もいます。
- 室内の喚起:喚起は常日頃からこまめに行うとよいでしょう。職場の個室の喚起も自分が率先してしていました。
心理的アプローチ
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認知行動療法的な介入(CBT)や短期の行動介入:においへの過敏さや回避行動を緩和するために効果を示した認知行動療法という心理学のアプローチがあります。全ての人に効くわけではありませんが、試してみるとよいかもしれません。
5. 医療機関で受けられる検査・支援
においへの過敏さが日常生活に支障をきたす場合は、専門医への受診を検討するとよいでしょう。受診の目安と、どこで何ができるかをまとめました。
受診の目安
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強い吐き気・嘔吐を伴う、あるいは仕事・学校に行けないほどの支障があるとき。
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発作的なにおいの異常(幻嗅)や、頭痛・けいれんがあるとき(神経系の評価が必要)。
受けられる検査
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嗅覚検査(におい識別や閾値検査)で客観的に嗅覚の状態を測ります。
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必要に応じて鼻の内視鏡検査、MRIなどの画像検査で構造的な要因を確認します。
治療・支援の例
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原因に対する治療(副鼻腔炎やポリープの除去、ホルモン治療など)。
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心理療法や行動療法で回避行動や不安を扱う。
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症状緩和のための日常生活アドバイスや職場・学校での配慮。

私は外出できない、出勤できない、まではいかなかったので受診はしませんでした。何とか自分で工夫したり、職場が専門家集団だったこともあり、それぞれの専門性からアドバイスをもらうこともありました。医師の知人には「漢方薬を試してみる?」と言われたこともあります。
6. 生活・職場での配慮と周囲への伝え方
においへの過敏さは目に見えないため、周囲に理解してもらう工夫が必要です。私は専門家で職場も専門家ばかりでしたので、理解はとてもよかったと思います。実践例をお伝えします。
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具体的な困りごとを伝える:ただ「においが苦手」ではなく、「○○のにおいがすると頭痛がしてぼーっとしてしまう」などと症状と影響を結びつけて説明すると分かってもらいやすいです。
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代替案を提示する:社内での香水使用自粛、室内の換気、飲食スペースの分離など、実行可能な対策を一緒に提案すると協力が得やすいです。

私の場合は、感覚過敏の方を多く支援する職場でしたので、においのあるものは身につけない、部屋の使用前後は常に喚起をする、飲食は空いている場所で自由にできる(その後は喚起する)という対策が日常でした。改めてとても有難かったです。
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医師の診断書や専門家の意見を共有する:必要な方にとっては必要に応じて配慮を求めるための裏付けになります。
7. さいごに
においへの過敏さは本人の主観が強く影響するため、「自分だけおかしいのでは」と孤立しやすい問題です。
しかし、最近の研究では、嗅覚過敏が心身に与える影響を客観的に示していて、単なる“好き嫌い”ではないことも示されるようになっています。
まずは信頼できる医療機関で原因を探り、必要なら心理的支援も併用するのが安全で現実的なアプローチです。
日常では、マスク、ガム、換気、香料断ちなど小さな工夫で随分と楽になります。
もしこの記事を読んで「自分も同じだ」と感じた方がいたら、まずは耳鼻咽喉科や心療内科/精神科で相談してみてください。
症状に応じて検査や対処法を具体的に提示してもらえます。
ひとりで抱え込まず、周囲に伝えるためのことばを用意しておくことも大切です。

